代表的な分野を以下にあげてみましょう*。
*ここでの代表的な分野は『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 社会学分野』(2014年、日本学術会議社会学委員会社会学分野の参照基準検討分科会)を参照しています。
1.相互行為や自我・アイデンティティ
社会は、人と人との相互行為から成り立ち、このなかで自我やアイデンティティ、生きる意味などが形成されていきます。こうしたミクロな社会関係をもとに、アイデンティティの揺らぎ、生きがいの喪失、差別や逸脱といった問題が生み出されていることをとらえます。
2.家族・親族のありかた
家族は、親密な相互行為がなされ生活が織りなされる重要な集団で、人は家族を含めた親密な関係性を基盤として成長し、人生を過ごし、年老いていきます。同時に家族などの親密な関係性は、コミュニケーション上の問題や、ケアの問題、虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)などの問題を孕んでいます。未婚化・少子高齢化、家族の解体なども今日的なテーマです。
3.ジェンダーとセクシュアリティ
ジェンダーは、公的な場面を含めた社会全体の構成にかかわる要因です。人間が性をもつ存在であることは、その関係性を豊かにする要素であるとともに、差別や抑圧を生む要因にもなってきました。セクシュアリティは、同性愛者への差別などの問題を生んできましたが、現在その多様性が認められる方向に社会が変化しています。
4.労働・消費などの活動と企業・産業など
企業のような経済活動を営む集団・組織、さらにさまざまな産業の構造発展や変動を理解することなしには、社会をとらえることはできません。グローバル化や情報化といった社会変動のなかで労働・消費のあり方や、集団・組織の仕組み、産業の構造などがどのように変化しているかを問うことは重要なテーマです。
5.環境問題や災害研究、科学技術の影響について
産業と科学技術の進展は、人間の生活を便利でゆたかなものにするとともに、他方で自然環境への負荷を与え、公害や温暖化、災害など多くの問題を顕在化させてきました。その発生メカニズムと影響を理解し、解決策について問うことも、現代社会の現在と未来を考える上で重要なテーマです。
6.医療・福祉・教育について
病んだ人、年老いた人、障害をもつ人、経済的に困難を抱える人たちとかかわり、そのニーズに対してケアを提供する医療や福祉における社会的関係や、その背景を問うことは、こうした多様な人々と共生する社会を構想するために重要です。また、子どもにケアを与えるとともに、社会の一員へと社会化する教育の場面では、いじめや非行などさまざまな問題が顕在化しています。
7.逸脱行動・社会病理
現代社会では規範が多様化しており、逸脱のありかたも多種多様になっています。社会のなかでなにが逸脱・病理・問題として構築されるのかというミクロな社会過程を把握するとともに、社会構造の変動とこれらの関係を解明し、たんに逸脱者個人の問題としてではなく社会問題として問うことが重要です。
8.階層・階級、不平等について
社会的不平等、社会的格差の拡大、貧困問題は現代社会の最大の問題のひとつで、社会学が当初から研究対象にしてきたテーマです。社会階層間の人の移動、社会的平等や格差に対する意識、社会的ネットワークや文化・生活様式などの違いを明らかにし、その変化の要因と、より平等なのぞましい社会の姿を示すことは、重要な研究課題です。
9.都市・農村などの地域社会、コミュニティについて
人口が稠密な都市に人々が集住する現象が近代社会の特徴のひとつで、東京など世界都市と呼ばれる大都市と地方中小都市の格差は拡大していて、そこで暮らす住民のコミュニティは変化しています。他方、農村は限界集落化といった問題を抱え、東日本大震災で露わになった大都市と地方・農村の関係の歪みも重要な研究課題です。
10.グローバル化とエスニシティについて
現代社会の変化は、世界的な資本・情報・ヒトのネットワーク化と移動に代表されるグローバル化の動きと密接に関連しています。国民国家を超えた社会の構造と変動を説明することが、現代の社会学では基本的な課題となっています。なかでも、異なるエスニシティの人々が同じ社会を形成することの重要性は高まっていて、人種間の差別や偏見の問題性を解明し、多文化共生が可能な社会を構想することが重要な研究課題になっています。
11.文化・表象・宗教について
文化を共有することは人と人を結びつけますが、この相違が葛藤や断絶を生むこともあります。これにはさまざまなシンボルや物語が含まれ、生と死を意味づける宗教もその重要な要素です。さまざまなサブカルチャーや対抗文化も、社会を刷新する力をもつ重要な研究対象です。
12.メディア・情報・コミュニケーションについて
情報をめぐる技術、インターネット、ソーシャルメディアなどの環境変化のなかで、メディアを介した情報伝達やコミュニケーションの社会的意義と影響は増しています。書籍、新聞、テレビなど既存のメディアの模索もふくめ、こうしたメディア・情報・コミュニケーションの現代的な状況と社会的影響を明らかにすることは重要な研究テーマです。
13.社会運動・市民活動、NPO/NGOなどの役割
公共的問題に取り組み、市民として社会をよりよい方向に変革していくためには、社会運動、市民活動とその担い手について注目する必要があります。社会運動・市民活動が掲げる理念とともに、具体的な実践や、目的達成のプロセスで直面する困難や課題を知ることは重要な研究課題です。
14.国家・政治・権力と政治参加について
国家・政治・権力の独自の働きを知ることなしに社会を理解することはできません。そして統治構造を理解した上で、市民の政治参加と科学者の政策提言が社会政策にどのように結びつくかを考えることが、社会学の目的の一つであり、公共性をもった市民を育てるためにも不可欠の課題になります。
どんな研究テーマがあるのか、リストにするとどうなりますか?