X
MENU
日本社会学会大会

第98回日本社会学会大会 シンポジウムプログラム(11月16日日曜日午後)

シンポジウム(1)モダニティは終わるのか?――時代診断ツールとしての社会理論を考える

会場:東二号館 2201教室

趣旨

日本を含め非西洋諸国の近代化について論じるときに生じる問題として、西洋の歴史的経験をふまえて構築された近代化論を、非西洋諸国の近代化に適用することの妥当性がある。かつてこの問題は、西洋の近代化を普遍的モデルとして非西洋諸国の近代化を捉えるとき、そこに見出される特殊性(モデルからの偏差)をどのように言語化するか、というかたちで問われてきたと言えるだろう。今日、近代についての問い直しがグローバルな規模で行われるなかで、その問いに加えて、そもそも西洋の近代化じたいが普遍的モデルであったのか、そしてこれからもそうであるのか、という問いも問われるようになっている。
こういった問題関心を背景として、モダニティを論じる社会理論や、モダニティという概念の今日的有効性を探ることとが、本シンポジウムの目的である。
この大きなテーマを論じるにあたり、議論の水準を明確にするため、本シンポジウムは U・ベックによるモダニティ論を一つの参照点とする。さまざまなモダニティ論のなかで、ベックの再帰的近代化論や第二の近代論は、リスクや個人化といった関連概念とあわせて、西洋社会のみならず、日本や韓国など非西洋社会の現状分析を行う際にも参照されることの多い理論である。「現代社会の自己認識の学」という社会学の性格を明快に示すものとして、それは広く参照されてきた。しかしながら、近年の学術研究の進展や世界情勢の変化を見渡すと、家族や社会意識、政治意識やナショナリズムなどをはじめとして、ベック理論によっても十分に捉えられない現代の諸現象が見られるようになっている。
そこで本シンポジウムでは、これらの領域について実証的研究をおこなう3名のパネリストが、それぞれの研究をふまえてモダニティを問い直し、ベックの議論を手掛かりにモダニティ論の時代診断ツールとしての
妥当性や問題点を論じる。
西洋にルーツを持つ社会学という学問を、いかにして非西洋社会の現実により即した、より開かれた学問へと発展させられるかは、グローバルな世界のなかで今日の社会学が直面する課題である。本シンポジウムは、社会理論と実証研究の対話をつうじてこの課題に取り組む。

登壇者

1 近代(化)論を東アジアから考える――家族論を中心に(仮) 日本女子大学 野辺 陽子
2 喪失との対峙――リスク社会を超える視座 上智大学 ホメリヒ カローラ
3 第二の近代論とトランプ時代のナショナリズム・政治意識(仮) 早稲田大学 田辺 俊介

・コメンテーター:落合恵美子(京都産業大学)、佐藤俊樹(東京大学)
・研究活動委員会担当委員:野辺陽子、ホメリヒ カローラ、安藤由美、松浦雄介

シンポジウム(2)社会学は不平等にどう取り組めるのか――社会階層をめぐって

会場:東二号館 2301教室

趣旨

2025年の本年、8回目の社会階層と社会移動に関する全国調査(SSM調査)が行われている。SSM調査は、1955年の第1回調査から70年という長きにわたり、日本社会の階層状況をとらえ続けてきた。この調査は、毎回、軸となるトピックやテーマを更新し、過去の調査項目や設計を維持しながらも、新しい質問項目や調査対象を追加することで、その時点の日本社会の階層に関わる問題や状況を的確にとらえることに尽力してきた。
一方で、この70年間で、日本社会のあり方は大きく変化した。グローバル化の波は国境を越えた人・モノ・情報の流動性を高め、少子高齢化の進行は社会構造そのものを変容させている。「失われた○○年」は延長され続け、経済成長を実感できない世代が社会の中核を担う大人になっている。このような社会変化の中で、従来の階層研究の枠組みでどこまで現代社会の実相を捉えられているのかという根本的な問いが浮上している。
また、2000年以降の格差社会(論)の隆盛は、「社会階層(もしくは階級)」という、ともすれば限られたアカデミックなサークルの中で流通していた専門用語を広く社会に浸透させることに寄与した。しかし、格差社会という認識の広がりは、人びとの間に存在する多様で複雑な「差異」を「持つ者/持たざる者」といった
単純な二分法に還元する傾向を生み出している。この状況は、現実問題として経済のパイの拡大が見込めない中で、人々が格差状況に対してより敏感にならざるを得ない社会環境と相まって、広い意味での階層問題への関心を高めている。いかなる要因(要素)が、どのような経緯で格差を生み、不平等につながるのか。教育、職業、資産、文化資本、社会関係資本など、これまで階層研究で注目されてきた要因に加えて、従来の階層研究の枠組みでは十分に捉えきれなかった新たな要因は存在するのか。焦点が拡大し、階層問題が複雑化する中で、階層研究が明らかにしうる課題、そして明らかにすべき課題とは何なのだろうか。本シンポジウムでは、これらの問いについて、狭い意味での階層研究者だけでなく、他領域の専門家を含めた幅広い視野から議論していきたい。

登壇者

1 格差・不平等に挑む社会階層研究:記述、介入、メカニズム 東京大学 藤原
2 福祉国家と平等――何のための階層研究か 名古屋大学 上村 泰裕
3 性的マイノリティと社会的不平等 早稲田大学 釜野 さおり

・コメンテーター:白波瀬佐和子(東京大学)、川野英二(大阪公立大学)
・研究活動委員会担当委員:知念渉、香川めい、小川和孝、吉田崇

日本学術会議共催 公開シンポジウム「社会学のアウトリーチ」

会場:西キャンパス第一講義棟 401教室

主催

日本学術会議社会学委員会課題解決のための社会理論分科会、日本社会学会

開催趣旨

近年、学術のアウトリーチ(研究成果の社会的還元・普及活動)や社会実装への関心が高まっている。社会学に関してもこれは例外ではなく、社会学の分析視角、理論、研究手法等を活かした研究成果が、現実社会のさまざまな課題・問題の理解や解決にどのように貢献し得るのかに、多くの関心が持たれるようになっている。
こうした状況を踏まえ、本シンポジウムでは、社会学がどのように現実社会と関わり、社会的な還元を果たし得るのかを、社会学とその視角に基づく貴重な実践を行っている方々の報告とディスカッションを通じて考えていくことを試みる。具体的には、現代社会における生きづらさ、差別、災害、幸せと政策立案に関する各分野から4名の報告者に登壇頂き、社会学とその視角・理論等が、社会課題・問題の理解や解決にどのように貢献し得るのかに関してご報告頂く。それに続く2名の討論者からのコメント、ならびに参加者との質疑応答を契機として活発で建設的な議論がなされ、本シンポジウムを通じて、社会学のアウトリーチとその展開可能性について新たな理解が得られることを期待したい。

総合司会

遠藤薫(学習院大学名誉教授)

開会の挨拶

山田真茂留(早稲田大学文学学術院教授)

開催趣旨説明

遠藤薫(学習院大学名誉教授)

報告

1 社会学研究を社会にどう還元するか――生きづらさと解放の臨床社会学より 日本大学 中村 英代
2 被差別当事者の人生体験の語りを聞く――『ハンセン病家族訴訟』の伴走者として 東北学院大学 黒坂 愛衣
3 社会学ならではの災害をめぐる研究と実践――東日本大震災被災地と継続的に関わってきた経験を中心に 青森公立大学 野坂
4 社会学は日本政府の政策を改善できるか?――実態・可能性・課題 京都大学 柴田

討論

渡邉雅子(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授)・中村高康(東京大学大学院教育学研究科教授)

総合討論・討論司会

筒井淳也(立命館大学産業社会学部教授)・有田伸(東京大学社会科学研究所教授

閉会の挨拶

遠藤薫(学習院大学名誉教授)

Back to Timetable >>