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会員・関連団体等からのお知らせ

シンポジウム「スチュアート・ホールの遺産」(11月26日)のお知らせ

東北社会学研究会では2023年度大会としてシンポジウム「スチュアート・ホールの遺産―文化・人種・政治」を開催いたします。
非会員も参加可能ですので、多くの方に参加頂ければと思います。どうぞよろしくご検討ください。

日時:2023年11月26日(日)13:00~16:30

場所:東北大学川内南キャンパス経済学部第3講義室

報告者:
毛利嘉孝(東京藝術大学)「クール・ソーシャリズム?―スチュアート・ホールにおける文化と政治」
吉田裕(東京理科大学)「『戦後』イギリス社会のレイシズムとスチュアート・ホールーノッティング・ヒル暴動からスティーヴン・ローレンス事件まで」
牛渡亮(東北大学他非常勤講師)「新自由主義という名の『行進』の先へ」

コメンテーター:
笹島秀晃(大阪公立大学)
大貫隆史(東北大学)

司会:
田代志門(東北大学)

参加費:1000円(学部生無料)

参加登録:URL(https://qr.paps.jp/96Mtc)より参加申し込み(11月22日まで)

企画趣旨
英国におけるカルチュラル・スタディーズを牽引したスチュアート・ホールが、2014年に逝去してからまもなく10年を迎える。彼の死後、英国や米国を中心に著作集の出版が相次ぐなど、ホールの遺した文化研究はいまなお社会について思考するための重要な参照点であり続けている。
他方で、この間、文化研究をめぐる状況は大きく変化してきた。とりわけ、COVID-19がもたらした世界規模の混乱は、新自由主義が生み出してきた社会の不均衡を可視化するとともに、人種間・民族間の対立を激化させた。こうした新たな文化情況を前に、ホールならば何を語ったであろうか。
本シンポジウムでは、ホール没後10年という節目にあたり、あらためて彼の知的遺産との対話を試みたい。きわめて多岐にわたるホールの業績の中で、今回は彼が生涯をかけて取り組んだ3つの主題に焦点を当てる。
第一の主題は、「文化」である。ホールにとって文化とは、命がけで議論する価値のある領域であり、そのキャリアの最初期から主たる研究対象であった。特に、小説や音楽、テレビ番組や広告といったポピュラーカルチャーや、ヒッピーやパンクといった若者のサブカルチャーに関する研究を通じて、文化と社会についての新たな知見を生み出してきた。カルチュラル・スタディーズが世界中へ伝播していく過程で、まず受容されたのはこの主題に関わる研究であった。
第二の主題は、「人種」である。19歳で故郷ジャマイカを離れて以降、終生英国で暮らしたホールにとって、みずからの「黒人性」は消えることのない違和感の源であった。こうした違和感をベースに、1980年代以降のホールは、人種的・民族的マイノリティのアイデンティティ・ポリティクスに関わる研究に多く携わった。ポストモダンにおける新たなアイデンティティについての研究は、今日最も影響力のあるホールの研究領域である。
第三の主題は、「政治」である。青年期のホールは、教条的なマルクス主義を批判し、英国のニューレフト運動を主導した。さらに、1970年代以降は、モラル・パニックやサッチャリズムに関する研究を通じて、新自由主義的な社会変革を丹念に追い続けた。最晩年に彼自身が「新自由主義革命」と名づけたこのプロジェクトは、いまなお世界中で進行中である。
シンポジウムでは、以上3つの主題ごとに報告者を設定する。報告者には、主題ごとにホールの主要な研究業績を整理した上で、その今日的な意義や問題点を明らかにしてもらう。さらに、コメンテーターからの提案をふまえて、全体討論において主題間の関連や残された課題について明らかにされることが期待される。