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会員・関連団体等からのお知らせ

環境社会学会第72 回大会シンポジウム 「人と自然のインタラクションⅡ:関係性価値と環境社会学」のご案内

環境社会学会では2025 年12 月6 日に奈良教育大学で標記のシンポジウムを開催します。
会員以外の方にもご参加いただけます。多数のご参加をお待ちしています(第72 回環境社会学会大会の一部として行います。シンポジウムを含む大会への参加には、事前のお申込みと参加費のお支払いが必要です。なお、シンポジウムのみ、オンライン参加も可能です)。

◇趣旨
今日、「自然」は保全や保護の対象として囲い込まれる一方で、気候危機の時代のレジリエンスおよびリスク管理の基盤として、また都市や地域のウェルビーイングやコミュニティ形成を支えるインフラとして制度的に再編されつつある。さらに、サステナブル・ファイナンスに象徴される環境の金融化や商品化が加速し、政策設計と科学技術の結びつきもかつてなく緊密になっている。里山保全、市民参加型モニタリング、ブルーカーボン、グリーンインフラといった実践に見られるように、生活世界に根ざしていた「自然」もまた、グローバルなサステナビリティ・レジームのもとで再編・制度化され、政策や経済活動の対象として積極的に管理されるようになっている。

これまで環境社会学は、身近な自然や生活世界における人と自然の関係性に関する研究を積み重ね、近代社会の基盤となってきた自然の外部化や人間と自然の二元論的思考を批判的に問い直してきた。しかしながら、気候危機が大きく世界の政治的状況と絡み合いながら私たちの生活を根本的に変えようとしている現在、環境社会学もまた、変容する人と自然の関係性に応答した学問的展開を試みる必要があろう。

商品化や金融化とともに急速に進展している、市場経済による自然の内部化について、環境社会学はどのような立場から議論しうるのか。サステナビリティ・レジームのもと社会変革が求められるなか、公正さと正義はいかに実現しうるのか。そして、自然をつくり管理する時代において、ガバナンスを導くのはどのような価値であり、規範なのか。

これらの問いは、気候危機と生物多様性のネクサスをいかに構築するかが学問的にも社会的・経済的にも喫緊の課題となるなか、ますます重要さを増している。とりわけ、人と自然の関係を実践的に把握し、理解すると同時に、これからの人と自然の関係性を思考するための柱となる価値と規範に関する研究は、広く分野をまたぐ喫緊の課題となっている。

本シンポジウムでは、IPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が提唱する「関係性価値(relational values)」の概念と、これまで環境社会学が蓄積してきた議論を交差させ、その相互展開の可能性を探る。関係性価値は、生態系や自然との関わりにおける人々の感情的・倫理的・文化的価値を重視する枠組みであり、従来の交換可能な経済的価値や内在的価値では捉えきれない関係性の層を明らかにしようとする試みである。日本の環境社会学は、コモンズ論、生活環境主義、生身・切り身論、人とモノの関係誌、レジティマシー論などを通じて、日常生活における自然の意味づけとそのガバナンスを丹念に記述し、科学や政策の言語だけでは捉えきれない自然との関係性の厚みを明らかにしてきた。いまやIPBES が関係性価値を世界的に位置づけようとするなかで、環境社会学が学問的・実践的にいかなる貢献をなしうるのかをあらためて検討したい。

登壇者の石原広恵氏は、関係性価値の議論を国際的にリードする研究者であり、とりわけ人文社会科学およびアジアからの発信として関係性価値を理論づけることに貢献している。篭橋一輝氏は、関係性価値の議論にいちはやく環境経済学の立場から応答し、価値論のなかでの関係性価値の位置づけについて論じてきた。両者の理論的検討に加え、二人の事例から関係性価値の実践的なフェーズと、理論的なフェーズにさらに光をあてたい。大門信也氏は、遠州灘の「波の音」というローカルかつ関係性がなければ表象も存在論的にも特定されない音に関する事例を扱う。谷川彩月氏は、外来種でありながら天然記念物にも指定されているカブトエビを事例とする。科学教育や田んぼでの農的実践を介して育まれる関係性あってこその天然記念物指定である。魅力的な議論の布陣をもって、環境社会学から再び人と自然のインタラクションについて論じたい。

◇開催日時: 2025 年12 月6 日(土)13:00-17:30
◇会 場: 奈良教育大学 R4 棟(奈良市高畑町)https://www.nara-edu.ac.jp/access/
◇参加費(事前): 非会員の方 3,000 円 非会員(学生)の方 2,000 円;環境社会学会会員 正会員・終身会員2,000 円、学生会員1,000 円
◇参加費(当日): 非会員の方 5,000 円 非会員(学生)の方 3,000 円;環境社会学会会員 正会員・終身会員4,000 円、学生会員2,000 円
◇参加費(オンライン参加):一律1,000 円
※シンポジウムのみ、オンラインでの参加も可能です。オンライン参加には事前申込みが必要です。
※シンポジウムURL は下記フォームより決済後、「Payvent Hub」よりご確認いただけます。申込完了後、Payvent から届く申込完了メール内の「申し込み内容を確認」ボタンをクリック、またはPayvent 公式ページ(https://payvent.net)から「参加者ログイン」をすることで、「Payvent Hub」にアクセスいただけます。
◇参加申込(事前): 11 月23 日(日)までに、下記の申込・決済フォーム(Payvent)からお申し込みください。
https://app.payvent.net/embedded_forms/show/68d62396b99af72
68fc07de8
*先着順で受け付け、定員に達した場合は早めに締切る場合があります。
◇参加申込(当日): 会場にて現金で参加費をお支払いください。満員の場合はご容赦ください。
◇登壇者: 石原広恵(東京大学)、篭橋一輝(南山大学)、大門信也(関西大学)、谷川彩月(人間環境大学)
◇司会・解題: 福永真弓(東京大学)
◇問い合わせ先:環境社会学会事務局 jaes@soubun.org
◇環境社会学会HP:https://jaes.jp