研究活動委員会企画テーマセッション
〈子ども〉から社会編成を考える——『家族変動と子どもの社会学——子どものリアリティ/子どもをめぐるポリティクス』をたたき台に
①コーディネーター:野辺陽子(日本女子大学)
②趣旨:
能動的なアクターとしての〈子ども〉が、各分野で前景化している。なお、ここでの〈子ども〉とは、「大人に対する子ども」と「親に対する子ども」の両方を意味する。
例えば、家族の分野では、家族の個人化後の〈子ども〉について、すなわち、大人/親にとって、家族の形成と退出が選択の対象となった後に、依存的な子どものケアをどうするかがひとつの論点となっている。そこで、家族のあり方に関わらず、すべての子どもに一定水準の良好なケアを保障する「子どもの保護」という論点が提起され、さらに、近年では、子ども自身を権利の主体として、家族の形成・退出に関連する意思決定に参画させようという——子どもの「準主体化」とも呼べるような――論点もまた顕在化してきている。
2022 年 12 月に出版した『家族変動と子どもの社会学——子どものリアリティ/子どもをめぐるポリティクス』(野辺陽子編、元森絵理子・野田潤・日比野由利・三品拓人・根岸弓著)では、このような社会状況に対する問題関心から、〈子ども〉に関する理論的検討を行い、また、様々な事例(離婚、第三者が関わる生殖技術、児童養護施設、児童虐待)の検討を通じて、現代の〈子ども〉をめぐる社会編成の複雑な側面と、そこから生じる〈子ども〉当事者の葛藤が、既存の視角——例えば、「保護か/自律か」、「子どもの解放か/社会統制の強化か」などの従来の二分法——では十分に把握できないことを明らかにした。
本セッションでは、同書をたたき台としながら、従来の社会編成に関する議論に〈子ども〉という観測点を導入 すると、どのように差異化されるのかについて議論を深化させるため、事例や分野の射程を広げたい。そのため、家族に関わらず、さまざまな分野の〈子ども〉に関する理論的研究、経験的研究を幅広く募集する。経験的研究に関しては、歴史的研究、質的研究、量的研究など、議論を豊富化する様々な事例研究を大いに歓迎したい。
③使用言語:日本語