6.1 投稿論文の差替え
当然のことながら,投稿者は,差替えの必要のない完成原稿を投稿しなければならない.ただし,投稿後に審査の支障となる部分を発見し,それを修正した場合には,締切時間前であれば受け付けることとする.
6.2 審査のめやす
『社会学評論』への投稿原稿の審査においては,以下の点が「審査のめやす」として考えられている.すなわち,「推論の論理性/資料の扱い方/先行研究・既存学説の理解/独創的な着眼および技法/文章表現/問題提起および結論の明確性/参考文献および参照の適切性」の諸点である.
6.3 論文執筆のさいに守るべき倫理(「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」より)
2006年10月に定められた「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」(2023年3月改訂)は,「4.論文執筆など研究結果の公表にあたって」として,9点の配慮を求めている.『社会学評論』に投稿する論文を執筆するさいにも当然これらの点に配慮しなければならない.その重要性に鑑み,以下に「4.論文執筆など研究結果の公表にあたって」全文を掲げておく.なお「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」全文は以下のウェブページで参照することができる.
https://jss-sociology.org/about/researchpolicy/
[付記]「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」が2023年3月に改訂され,2023年9月1日より施行されたことを反映し,本項目の内容を改訂した.
「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」
4.論文執筆など研究結果の公表にあたって
研究成果を公表する際に下記のような配慮をすることは,研究の質の向上につながるだけでなく,自身の研究者としての評価をも左右します.
(1)他者のオリジナリティの尊重
研究結果の公開にあたって,他の研究者や原著者のオリジナリティはもっとも尊重されるべきであり,他の研究者の著作者としての権利を侵害してはなりません.また盗用は,学問上の自殺行為と言えるものです.
今日では,インターネットなどを通じて,電子情報のコピーやペーストが容易にできるようになってきました.このようなメディア環境だからこそ,自分のオリジナルとそれ以外とを明確に区別し,他から得た情報は情報源を明記するという原則を厳守することが一層重要です.学生・院生に対しても,この原則を徹底するよう指導しなければなりません.
研究会などディスカッションの場で表明された他者のアイデアを断りなく自分のものにすることも避けなければなりません.とくにアイデアの発展にとって有益なコメントを得た場合には,研究会への謝意や,相手方や日付を特定できる場合には「この点については,○○研究会(○○年○月○日)での××氏のコメントに示唆を得た」「この点については,○○研究会(○○年○月○日)での討論に示唆を得た」などのように注や付記などで明記すべきです.
(2)先行研究の尊重
学術論文を執筆する際には,先行研究を適切にふまえ,しかもそのことを論文の中で明示する必要があります.先行研究やその問題点をどのように理解しているかを示すことは,自分の問題意識や問題提起のオリジナリティやその学問的意義を他者に明確に伝えるうえでも不可欠です.
重要な先行研究に言及しないことは勉強不足を露呈することにもなりかねませんし,フェアな態度とは言えません.
親しい研究仲間の論文に片寄った言及が散見されることがありますが,公正さを欠くものであり,慎しむべきことです.
(3)引用の基本原則
他者の著作からの引用は,公表されたものからしかできません.研究会でのレジュメや私信など,公開されていないものから引用する場合には,引用される側の許可が必要です.
公表された著作から引用する場合は,著作権法第32条の引用に関する規定にもとづいて許可なく引用することができます.引用に際しては,(a)引用が必要不可欠である,(b)引用箇所は必要最小限の分量にとどめる,(c)引用文と地の文を明確に区別する,(d)原則として原文どおりに引用する,(e)著作者名と著作物の表題,引用頁数など出典を明示する,という基本原則を遵守しなければなりません.
(4)図表などの「使用」
オリジナリティの高い図表や写真・絵画・歌詞などを使用する場合は,法律用語としては「引用」ではなく,他者の著作物の「使用」にあたります.その場合には,当該図表・写真・絵画・歌詞などの著作権者から使用の許諾を受けなければなりません.
(5)投稿規定・執筆要項の遵守
論文を雑誌に投稿する際は,各雑誌ごとに,投稿規定・執筆要項を定めていますから,執筆に先立って熟読し,細部まで遵守しなければなりません.日本社会学会は『社会学評論スタイルガイド』を定めています.日頃から,このスタイルガイドに依拠して論文を執筆するよう心がけましょう.
とくに大学院生など発表経験の乏しい会員の場合には,投稿に先立って,指導教員や先輩・同輩の院生などに目をとおしてもらい,批評を仰ぐことが重要です.誤字脱字が多い,日本語として意味が通りにくい,文献や注が不備であるなど,不注意な論文が散見されますが,そのような論文を投稿することは,投稿者自身にとって不利なばかりでなく,編集委員会や査読者に無用な負担をかけることになります.
(6)「二重投稿」の禁止
同一あるいはほとんど同一内容の論文を,同時に別々の雑誌に投稿することは「二重投稿」として禁じられています.学術雑誌の場合には,投稿論文は未発表のものに限られます.どの範囲までを既発表とし,どこからを未発表とするのか,その具体的な線引きは,必ずしも容易ではありません.投稿しようとする雑誌ごとにどのようなガイドラインになっているか,確認しておきましょう.
またアイデアを小出しにして,発表論文数を増やそうとするような態度は慎むべきです.
(7)査読手続きの尊重
査読は,独立した専門家からの評価を受けることで,自分では気づいていなかった論文の問題点に気づき,論文の質を高めることができる機会です.また,社会に対しても一定の質を保った研究が公刊されるための仕組みがあることを示すことにより,学術活動に対する社会的信頼を高めることにもつながります.
そのため,査読者に訂正等の指示を受けた場合には,その指摘に対しては誠実に対処しましょう.査読者が「誤解」したと考えられる場合もありえますが,なぜ誤解を招いたのか,誤解を防ぐにはどのように記述を改善すればよいのか,という点から,投稿者自身が検討することが大切です.ただし,納得のいかない修正コメントに対しては,論拠を示して編集委員会に意見を述べることができます.
(8)著作者の権利
著作者であることによって,大別して,経済的利益の保護を目的とした財産権である著作権と,人格的利益の保護を目的とした著作者人格権の二つの権利が派生します.著作者としての自分の権利を守り,また,他者の権利を侵害しないように留意しましょう.近年,著作権を発行元に譲渡する場合が増えていますが,著作者人格権は,あくまでも著者自身にあります.
自らの著作を,別の書籍や雑誌に再録したり,あるいはホームページなどに転載する際は,著作権の帰属に気をつけ,発行元および著作権者から許可を得ることが必要です.
(9)共同研究のルール
共同研究の開始に先立って,あるいは研究の初期段階で,研究チーム内のルールについて十分に話し合い,合意しておきましょう.とくに役割分担や協力の内容や成果の発表の仕方について,発表の時期や内容,媒体などについて,合意内容を研究チーム内で確認し,それを遵守しなくてはなりません.なお,こうしたルールは研究の進捗に応じて適宜見直され,再検討される場合がありますが,その際にも十分な話し合いを経ることが大切です.
適切なオーサーシップ(著者性)の確保については留意しましょう.そのためには,誰が著者に含まれるべきか,著者順はどうあるべきかについて予め研究チーム内で十分に話し合っておくことが重要です.特に学際的な研究を行う場合には,研究分野によってオーサーシップの考え方が大きく違うことを知っておく必要があります.研究成果に対する貢献のあり方を明確化することは,研究に対する責任を明確化することにもつながります.
また共同研究が終了したのちも,その研究で得られたオリジナルなデータの取扱いについては,共同研究者の合意を得るなど,慎重な取扱いが必要です.
6.4 二重投稿などの禁止
「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」とは別に,『社会学評論』では二重投稿について以下のように定めている.
『社会学評論』は,投稿規定第1項において「本誌に発表する論文等は,いずれも他に未発表のものに限る」と規定している.すなわち,すでに雑誌論文(掲載予定・投稿中のものを含む)もしくは単行図書・単行図書所収の論文(出版予定のものを含む)等として発表したものは投稿できない.既発表論文には,科研費報告書・修士論文・博士論文・学会報告資料も含まれる.このように判断するのは,「発表」は「刊行」よりも広い概念であり,なんらかの形で研究業績として評価され,また第三者が閲覧・利用できる状態になることすべてを指すからである.したがって,これらの論文あるいはその一部を,そのまま投稿することはできない.投稿論文は,議論を発展させたかたちに書き直した新たな論文であることが必要である.また,既発表論文をもとにして書かれた,または関連する内容の論文を投稿する場合には,本『社会学評論スタイルガイド』が定めるとおり,注または付記において,これらの論文にリファーし,両者の関係を明確に述べることが必要である.
また『社会学評論』への投稿と併行して他の雑誌にも投稿するといった二重投稿も認められない.同様に,『社会学評論』への投稿と併行して単行図書に寄稿することもできない.
投稿規定第1項では,さらに「会員の投稿原稿が掲載されたときから,1ヶ年を経過するまでは当該会員は新たな原稿を投稿できない」と規定しているので,この点にも留意すること.ある論文を投稿して審査の結果がでないうちに別の論文を投稿するといったことも,当然認められない.
なお,すでに公刊されている雑誌論文(掲載予定・投稿中のものを含む),単行図書・単行図書所収論文(出版予定のものを含む),博士論文をもとにして書かれた,もしくは,関連する内容の論文を投稿する場合には,これらの既発表論文すべてのコピーと,これらの論文と投稿論文の関係について説明した文書を添付すること.この場合,引き写しに相当する部分が全体の3分の1未満で,かつ,同趣旨の内容が論文の中心部分を占めていないと判断される場合のみ,投稿を受け付ける.なお,編集委員会で必要と認めた場合には,論文審査に入る前に,既発表論文と投稿論文の関係について点検を行う.
科研費報告書(およびそれに準ずる報告書)・修士論文・未公刊の博士論文・学会報告資料の場合,必要な書き直しの程度については,投稿者の裁量を尊重する.この場合,関連する論文・資料を添付する必要はないが,投稿論文の注または付記でかならず言及すること.