論文中で他の論者に言及する場合,初出時にはその氏名はフルネームで記載する.たとえば,たんに「高橋は」とか「佐藤は」と書いたのでは,同姓の社会学者が何人もいて,特定しにくいからである.2度めからは姓だけでよい.ただし,ひとつの論文のなかで言及する論者に同姓の者が複数いる場合には,2度め以降もフルネームで記載する.また,言及する氏名には敬称をつけないのが原則である.
外国人の研究者に言及する場合も,同様に,初出時にはフルネームを記載する.その場合,カタカナ表記における,ファーストネーム,ミドルネーム,ラストネームなどの区切りは「・」を用いる.また,名前の一部を省略形のアルファベットで表記する場合は、省略文字は「.」とする(例:ジョージ・H. ミード).表記のスタイルとしては,カタカナ表記(たとえば,カール・マルクスまたはK. マルクス)でも,アルファベット表記(たとえば,Karl MarxまたはK. Marx)でもかまわないが,ひとつの論文のなかでは上記の4通りの表記法のいずれかで一貫した記載をすることが望ましい.
なお,文献リストでの記載法とは異なって,本文中ではファーストネーム,ミドルネーム,ラストネームの順で表記する(民族によって氏名の表記法はさまざまであるが,要するに,初出時は日常的に使用されている語順で表記すればよい).外国人研究者の場合も,2度め以降はラストネームだけとする(ラストネームをもたない民族の場合には,その人を代表しうる名前の部分を表記する).
最後に,論文中で自らの文献を引用する場合であるが,上述したルールに加えて,その文献の著者が投稿者自身であることが判明してしまうような表現を用いないように注意すること.たとえば,「拙稿」などの表現は用いないようにする.
典拠した文献を示す注(以下,文献注と略記)は,本文中の適切な箇所に,カッコ書きの割注で記載する.文献注のカッコは全角の丸カッコ( )を用いる.
文献注は,後述の文献リストと連動するものであり,(著者名 出版年)のかたちで表記する.著者名と出版年のあいだにはかならず半角のスペースを入れる.たとえば,Russellという著者が1991年に書いた本をとりあげた場合,スペースを入れないと,(Russell1991)となってしまい,わかりにくくなるからである.(Russell 1991)であれば,見やすい.
文献注には,著者名は姓だけを記載する.ただし,ひとつの論文のなかで参照する文献に同姓の著者が複数いる場合には,文献注の著者名は,漢字表記であれば氏名すべて,アルファベット表記であれば,ラストネーム,イニシャルとする.たとえば,Alfred WeberとMax Weberの場合であれば,(Weber, A. 19xx),(Weber, M. 19xx)とする.
文献からの引用をおこなった場合には,(著者名 出版年: 引用ページ数)のかたちでかならず引用ページを明記しなければならない.引用ページ数は数字のみを記載し,xx頁とかpp. xx-yyとは書かない.この場合,出版年とページ数のあいだは半角コロンと半角スペースでつなぐ.
引用ページが複数ページにわたり,重複している位の数字がある場合には,その記載を省略する.たとえば,71-2, 100-4, 321-5, 600-13, 1100-23, 1536-8.なお,文献リストにおいて,初ページ-終ページを記載する必要のある場合にも,この方式による.
以下,文献注として想定されるさまざまなケースについて,例示しておく.
単著の場合は,(見田 1979),(Broadbent 1998).
ページ数も記載する場合には,(見田 1979: 128),(Broadbent 1998: 371-3).以下,ページ数を記載する場合は,同様にする.
同一著者の同じ出版年の文献が複数ある場合には,出版年の後にa, b……と小文字のアルファベットを順につけて区別する.(Goffman 1961a),(Goffman 1961b).
共著の場合は,(奥田・広田 1982),(Cohen and Arato 1981).邦文の文献の場合は著者名をナカグロでつなぎ,英語の文献の場合は著者名はandでつなぐ(ドイツ語の文献の場合はund,フランス語の文献の場合はet,等々).なお,andは&としてもよいが,ひとつの論文のなかでは一貫した表記法をとらなければならない.
共著者が3名以上の場合は,(高橋ほか 1965),(Zald et al. 1995).ファーストオーサーのみ記載し,「ほか」「et al.」をつける.
編書の場合は,(栗原編 1996),(Hall ed. 1979).
編者が2人の場合は,(宮島・梶田編 1991),(Johnston and Klandermans eds. 1995).
編者が3人以上の場合は,(舩橋ほか編 1998).
訳書の場合は,(Goffman 1961=1984).すなわち,(原著者名 原書の出版年=訳書の出版年)のかたちで記載する.(Goffman 1961=1984: 78)と記載すれば,78というページ数は訳本のページ数を示すことになる.訳書があっても,原書のほうを参照して自分で独自に訳出した場合には,(Goffman 1961)とのみ記載する.(Goffman 1961: 78)と書けば,78は,原書のページ数を示している.原書と訳書双方のページ数を示したい場合には,(Goffman 1961: 78=1984: 86)と表記する.
同一著者の複数の文献を参照した場合には,(見田 1979, 1984).各文献の出版年のあいだは,半角カンマと半角スペースでつなぐ.
異なる著者の複数の文献を参照した場合には,(奥田 1983; 倉沢編 1990; 高橋編 1992).文献と文献のあいだは,半角セミコロンと半角スペースでつなぐ.
学説史を議論する場合など,初版の出版年が問題となるのに,手元にあるのはたとえば第4版である,といったことがありうる.また,雑誌論文が後年編著書に再録され,執筆者が参照したのは後年の編著書版である,という場合もある.このような場合は,(Simpson and Yinger [1953] 1972)や(吉田 [1974] 1990)のように,(著者名 [初版の出版年] 手元の版の出版年)もしくは(著者名 [初出誌の出版年] 編著書の出版年)のかたちで記載する.
あるいは,K. マルクスの『経済学・哲学草稿』は,執筆は1844年であるが,長いこと発見されない状態にあった.このような場合も,初版の出版年の表示に準じて,原則,(Marx [1844] 1932)とする.訳書を参照するとなると,(Marx [1844] 1932=1964)となる.
以上のような文献注の記載法は,これ自体,可能なかぎり記載の簡略化を追求した結果である.したがって,この文献注の記載法においては,”ibid.” や “op. cit.” や「同書」「前掲論文」などを併用してはならない.
ただし,以上の文献注の記載法によるとかえって煩雑になる場合――たとえば,学説研究などで同一文献からの引用頻度がひじょうに高く,かつ,原書と訳書双方のページ数を表示する必要がある場合――には,別途の記載法を考案してもよい.ただし,注などでその旨を明記すること.
たとえば,K. マルクスの『経済学批判要綱』について議論する場合を例示しておこう.
『経済学批判要綱』からの引用にさいしては,原書は,K. Marx, 1976, “Grundrisse der Kritik der politischen Ökonomie, Erster Teil,”Marx/Engels Gesamtausgabe, Zweite Abteilung, Band 1, Teil 1, Berlin: Dietz Verlagを用い,訳書は,資本論草稿集翻訳委員会訳, 1981, 「経済学批判要綱 第一分冊」『マルクス 資本論草稿集①』大月書店を用いる.以下,(要綱第一分冊 S. xx, yy頁)というかたちで,上記の原書と訳書のページ数を示す.
文献から直接の引用をせずに,他の研究者の業績に言及しただけの場合や自分の言葉でまとめなおした場合でも,かならず文献注をつけなければならない.他の論者の業績に依拠した議論の部分と自分自身の議論の部分を不明確にしたかたちで論文を書くことは,許されないことであり,剽窃の謗りを免れないからである.
このような場合の文献注のつけ方には,研究者名のすぐ後につけるやり方と,言及が終わったところでつけるやり方がある.どちらの方式を採用してもかまわないが,ひとつの論文のなかでは一貫した方式をとらなければならない.例示すれば,つぎのようである.
見田宗介(1979)によれば,……である. |
見田宗介によれば,……である(見田 1979). |
後者の方式をとる場合には,…….(著者名 出版年)とはせずに,……(著者名 出版年).というかたちで文献注のカッコを閉じた後に句読点をうつ.もちろん,必要に応じてページ数を記載してもよい.
また,著者名(出版年)の記載の仕方は,読者にその文献の参照を求める場合にも見られる.ただし,文献注は,もともと本文のあいだに割り込むかたちの注釈であるので,下段の書き方は間違いであることに注意.
○ | この点については,見田(1979)を参照されたい. |
× | この点については,(見田 1979)を参照されたい. |
外国語で書かれた文献を参照した場合には,つぎのいずれかの方式にする.
ジェフリー・ブロードベント(Broadbent 1998)によれば,……である. |
ジェフリー・ブロードベントによれば,……である(Broadbent 1998). |
Jeffrey Broadbent(1998)によれば,……である. |
Jeffrey Broadbentによれば,……である(Broadbent 1998). |
すなわち,アルファベット表記の著者名に続いて文献注を入れる場合(上記3番目)以外は,たんに(出版年)とはせず,(アルファベット表記の著者名 出版年)を記載すること.
文献から短い文章を引用するときは,本文中にかぎカッコ「 」でくくるかたちで引用をおこなう.そのさい,引用する文章中に「 」が使われている場合には,そのカッコは『 』に変える.また,引用文が終わってかぎカッコをとじた後に,文献注をつける.
○ | ……本文……,「……引用文……」(著者名 出版年: ページ)……本文……. |
× | ……本文……,「……引用文……(著者名 出版年: ページ)」……本文……. |
文献から長めの文章を引用する――引用文が数行にわたる――ときは,前後各1行ずつあけ,かつ,左側を全角で2字分字下げして,引用であることを明示すること.
引用文の記載の仕方を例示すれば,つぎのとおり.
①は,標本調査ではなく全数を分析することを意味する.これは標本から母集団を推測するために用いられてきた推測統計学的手法の否定という主張を伴っている.
統計的な標本は,数学の定理や引力の法則のように,文明発展の土台として不可欠な要素だと人間は考えがちだ.しかし,その歴史は100年にも満たない.ある技術的な制約の中で,特定の時代に,特定の問題を解決するために開発されたものにすぎない.……ビッグデータの時代に無作為抽出標本が必要だと騒ぐのは,まるで自動車の時代に馬の鞭を振り回すのと同じだ.(Mayer-Schöberger & Cukier 2013=2013: 53-4)
もちろんこの主張に論点の歪みが含まれていることを見出すことは容易だろう.本特集の佐藤論文で詳細に検討される通り,(以下略)
(仁平・藤田 2017: 328)
長い引用をおこなう場合の約束事は,つぎのとおり.
引用部分についても,最初の行頭および新しい段落の行頭は,全角1字分のスペースをとる.また,段落の途中からの引用であっても,冒頭に省略を示す……(三点リーダ2つ)を入れる必要はない.
この形式の引用においては,引用文の最初と最後にかぎカッコ「 」はつけない.かぎカッコをつけないことで,引用文中の「 」を『 』に変える必要が生じない.
引用文の末尾には,かならず文献注(著者名 出版年: ページ)をつける.そのさい,引用文の句点の後に,改行やスペースをとらず,続けて文献注をつける.つまり,長い引用の場合には,「……と同じだ(Mayer-Schöberger & Cukier 2013=2013: 53-4).」というように文献注の後に句点をうつのではなく,「……と同じだ.(Mayer-Schöberger & Cukier 2013=2013: 53-4)」というように「引用文 ピリオド(文献注)」とすることに注意.
なお,注において,長い引用をおこなう場合には,前後各1行ずつあけることはせずに,注部分の通常の文章よりもさらに左側を全角で2字分字下げするだけでよい.
また,引用一般についての約束事は,つぎのとおりである.
引用文の原文が縦書きであるとき,原文で用いられている漢数字は,このスタイルガイドの数字の記載法にしたがって,算用数字に変える.ただし,史料などからの引用において,尺貫法などが用いられていて算用数字に置き換えることが不自然な場合は,漢数字のままでよい.
句読点についても,引用にさいしては句読点をすべて「.」と「,」にそろえる.
原文で旧かなづかいや漢字の旧字体が用いられている場合,引用にさいしては,現代かなづかいと新字体に変えてもよい.ただし,注などで,「引用にさいしては,旧かなづかいは現代かなづかいに,旧字体は新字体に変えた」旨をことわる.
引用をおこなうにあたってもっとも大事なことは,原文どおりの引用をすることである.誤字・当て字・脱字などもそのまま転記し,当該語句の上に(ママ)とルビをふらなければならない.
聞き取り調査による資料,エスノメソドロジーにおける会話分析(映像分析)のデータ,参与観察によるフィールドノーツなどの資料からの引用の場合も,前述の「短い引用」もしくは「長い引用」の書き方にしたがう.ただし,文献注ではなく,資料からの引用文の末尾に注をつける.なお,同一資料から頻繁に引用をする場合には,初出時に一括して注をつけてもよい.
注には,誰に対して,いつ,どこで聞き取りをしたのかなどの必要な情報を載せる.参与観察などの場合は,いつ,どこで,どれくらいの期間,どのような形で実施したのかなどの必要な情報を簡潔に明記する.人名などは実名をあげる必要性がないかぎり,匿名化して表記する.会話分析(映像分析)データの場合は,トランスクリプト記号の説明を載せる.
ここでは,聞き取り調査の引用の仕方と注の例示をあげておく.
NSが暮らすA県では,公立学校の教員の”国籍条項”は撤廃されており,わずか2名だけだが在日韓国人が正式採用されている.その意味では,教師になりたいという彼女の夢は,まったく実現不可能ではない.ただ,問題は彼女の親の意向だ.
親が許してくれるなら,できるかぎり,先生になれるように頑張っていきたいと思うんですね.母親は,私の年ぐらいで結婚もしないで仕事してるというのは,恥ずかしい,って.いまも,「恥ずかしくて,親類の人にも言えへんから,頼むから〔産休代替教員の仕事を〕辞めてくれ」って,そればっかり.3)
彼女のもうひとつの夢であり,悩みの源泉でもあるのは,恋愛問題である.
そして,注を書く.たとえば,つぎのとおり.
3)NSは,1964年生まれ,韓国籍の在日3世である.5人姉妹の長女.聞き取りは,
1989年7月27日におこなった.
なお,扱うテーマや問題によって,場所や地域名を明記することでインフォーマントの匿名性確保が難しいと判断される場合がある.そのような場合,匿名性が確保されると判断される程度に,資料入手にかんする情報を匿名化してもよい.ただし,基本的な方針は,資料入手にかんする情報はできるかぎり明確にすることとする.
また,聞き取り資料の例示というよりも,あるインフォーマントから得た情報を本文中に記述するような場合には,当該箇所に注をつけてその旨を表示する.たとえば,つぎのとおり.このような場合には,氏名に敬称をつけてもかまわない.
5)この点については,1993年3月1日に,在日韓国青年会中央本部会長の金京必氏
から口頭で教示を得た.
なお,フィールドワークをとおして入手した団体や個人の発行したパンフレットの類からの引用にさいしては,文献リストに記載するとともに文献注をつける.
聞き取り資料や会話(映像)トランスクリプトのもとになる録音テープやICレコーダーのファイル,VTR映像,フィールドノーツなどの原資料は,引用した以外の部分も含めて保存しておき,論文査読のさいに,なんらかの理由でそれらを点検する必要が生じた場合に提示できるようにしておく.
新聞記事や商業雑誌などからの引用の場合も,上述の引用規則にしたがうが,たんに(『朝日新聞』1998.11.3朝刊)とか(『毎日新聞』1998.11.11夕刊)と出典を注記するだけでよく,文献リストに文献としてあげる必要はない.ただし,版や地域によって記事掲載の有無や内容,掲載位置が異なることがある(とくに地方版の記事の場合).したがって,必要と思われる場合には,朝刊,夕刊の区別だけでなく,(『○○新聞』1999.3.15夕刊,第○版,○○県版,○面)などとより詳細な情報も記載するとよい.
発行年月日の記載については,1998年11月3日であれば,邦字の新聞・雑誌の場合には,1998.11.3というように,「年月日」の表記の代わりに半角のピリオドを用い,英字の新聞・雑誌の場合には,たとえば,(The New York Times, November 3, 1998)のように記載する(他の言語による場合は,その言語に一般的な年月日の表示をするか,邦字の場合と同様にしてもよい).
なお,新聞・雑誌などからの引用であっても,署名入りの文章の場合は,文献リストに記載するとともに文献注をつける.
インターネット上で提供される電子情報を論文で使用する場合も,紙媒体で提供される資料や文献を使用するときと同様に,論文の知見の追試可能性に配慮した文献注・文献情報の提示が求められる.つまり,紙媒体と同様に,文書の所在,作成者,作成時期などが示されなければならない.文献注・文献情報は言及しようとする文書について記載しなければならないが,ウェブ文書の場合は,言及しようとする文書の作成者や作成時期と,文書が掲載されたウェブサイトのそれとが同一とは限らないことに注意が必要である.文献リストに記載する文書の所在も,ウェブサイトのホームページではなく言及しようとする文書を掲載したウェブページのURLによって示す.ただし,JSTORなどの文献データベース上の文書に言及する場合はデータベース名を示す(具体例については4.5を参照).
なお,ウェブ文書をデータとして使用する場合も,引用のつど文献注をつけ,文献リストに対応する文献情報を記載する.
引用または参照する場合の文献注のつけ方は,3.2-3.5の引用規則に準ずる.すなわち,ウェブ文書を引用する場合の文献注は,「……引用文……」(著者名 出版年: ページ数)などの形で,ウェブ文書から直接の引用をせず参照する場合の文献注は,(著者名 出版年)または著者名(出版年)という形で,紙媒体の文献注に準じて示す.
なお,以下に著者名や更新日が不明な場合の対応についても記す.ただし,著者や更新日(作成日)が不明の文書を先行研究として使用することは,原則として避けるべきである.
作成者名が不明のウェブページなど著者名がわからない場合は,ウェブサイト名などを著者名に代えて記載する.
言及するウェブ文書に,固定した出版年があるか否かで以下のように異なる.ただし文献リストには,いずれの場合も,文書の取得日を記載する必要がある(具体例については4.5を参照).
・JSTORなどのデータベースから得た文書を使用する場合など,言及しようとするウェブ文書に固定した出版年があるときは,出版年を記載する.
・言及しようとするウェブ文書が固定した出版年をもたない場合は,文書の最新版を用い最終更新年を記載する.
・言及しようとするウェブ文書が固定した出版年をもたず,更新日も不明の場合は,ウェブ文書の取得年を記載する.
言及しようとするウェブ文書にページ数が明記されていない場合は,ページ数に代えて「引用箇所が何段落目か」を,「引用箇所が含まれるセクションの見出しから数えた段落数」により文献注で示す.文献リストには,当該セクションにかんする文献情報を含めなければならない.
(Beutler 2000: Conclusion section, para. 1) |
(渡辺 2009: 第5段落) |
URLを共有する同一ウェブページからの引用を複数回おこなう場合も,紙媒体資料の引用と同様に,上記の例にしたがってそのつど文献注をつけ,引用箇所を明示する.
図書館等で半永久的に閲覧可能な紙媒体の資料と異なり,ウェブ文書を論文で使用するさいは独自の注意が必要となる.以下に特に注意が必要と思われる点について示す.
インターネット上に存在する電子情報は万人の閲覧に開かれてはいるが,調査が回答者の協力を必要とするのと同様に,作成者が拒否する場合に論文で使用することはできない.「無断引用不可」「無断転載不可」の意思表示があるウェブサイトや,加入手続きが必要となるインターネット上のコミュニティなどでのやりとりを論文で使用する場合は,使用許可を得た旨を明記するなどの注意が必要となることに留意する.
論文でウェブ文書に言及する場合は,書籍や雑誌論文の引用と同様,読者による確認が可能となるよう,該当箇所を直接閲覧可能なURLを引用文献リストに記載する.ウェブページに貼られたリンク先の文書に言及する場合は,リンクの掲載されたウェブページの所在ではなく,リンク先の文書(引用しようとする当の文書)のURLを記載しなければならない.したがって,ブログ記事のように,ひとつのウェブサイト内でさらに固有のURL(固定リンクまたはパーマリンクと呼ばれる)を与えられた文書に言及する場合は,ウェブサイトのホームページのURLではなく,記事に与えられた固有のURLを記載しなければならない.
ウェブでは,文書の半永久的な閲覧可能性が確保されていない.このため,ウェブ文書を論文で使用する場合は,以下①~③の手続きをとる必要がある.
①論文で使用したウェブ文書の保存(PDF化など)
②文献リストに記載するURLのスペルチェック
③論文提出・修正の各段階で,記載したURLで当該文書にアクセスできることを確認.必要ならばURLを更新.
インターネットから先行研究を取得し引用する場合は,ウェブ上にいくつかの版が存在する可能性に注意する.最新版を使用し,その書誌情報を文献注・文献リストに示すこと.
言及する箇所のURLが異なれば,別文献として扱う.したがって,同じウェブサイトの異なるウェブページに掲載された,著者名・最終更新年が同一の2つのウェブ文書に言及する場合の文献注は,紙媒体の場合と同様に,(著者名 出版年a),(著者名 出版年b)とし,文献リストもこれに準じて作成する.
また,言及箇所のURLは同一でも,言及された2つの記事の更新日(作成日)が異なる場合は,言及箇所の最終更新日を「出版年」として用い,別文献として扱う.
ウェブ文書からの引用例を示せば以下のとおりである.ページ数に代えて段落が用いられている点に注意されたい.
「ゴール・キックを1つ蹴るたびに数億円と考えたら,働くことにばからしさを感じない方がおかしいというものである.労働の価値にそれほどの差はないこと,その差が多くの貧困の上に成り立っていることなど,経済不況がもたらす認識には,大事なものが少なくないように思う」(渡辺 2009: 第5段落)として……